【スマホ 熱い】発火危険性、電池劣化影響を電池技術者が解説!

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スマートフォンやノートパソコンやタブレットが、ものすごく発熱していることありませんか。

このような症状について、スマホの部品開発3年、電池開発7年以上を経験している私が、スマホ発熱時にデバイスのなかで何が起こっているか、何が危ないのかを、解説いたします。

この記事で分かること ・発熱の原因
・電子部品と電池の温度耐性
・電池が発火する理由
・発熱による電池寿命影響と危険性

スマホやノートパソコンがすごく熱くなる原因

スマホでゲームをしたり、ノートパソコンでphotoshopなどの動画編集ソフトなど、重たい処理を行うと、ものすごく熱くなる時があります。

このとき、スマホやノートパソコンのなかで何が起こっているかご存じでしょうか。

なかでは、CPUが演算や制御を行い、メモリにはデータが出し入れされ、HDDへのデータ記録、モニターへのリアルタイム描写など、数多くの複雑な処理が「電気」を使って行われています。

また、スマホやノートパソコンのなかには、膨大な数の電子部品がありますが、すべての電子部品には内部抵抗があるため、 「電気」が流れると発熱してしまいます。

特に、重たい処理を行うときは、パソコンのスペック限界まで使って処理を行うため、多くの部品が発熱し、放熱が間に合わずにスマホやパソコンがものすごく熱くなってしまいます。

このような、発熱がひどい状態で、長時間、スマホやノートパソコンを使い続けると、電子部品や電池の劣化が進んでしまいます。また、発熱により電子部品や電池が劣化すると、抵抗(内部抵抗)があがるため、より発熱するようになります。このため、悪循環となり、どんどんと劣化が加速することになります。

スマホ部品と電池の温度耐性について

スマホやノートパソコンには、膨大な数の電子部品や、電池が搭載されています。

電子部品や電池には、それぞれ、温度耐性があり、快適な温度、性能が低下する温度、故障する温度が異なります。特に、電池は、高容量にするために可燃性のあるリチウムや有機溶媒を用いているため、故障するだけでなく、最悪、発火することがあります。

ここでは、そのような電子部品と電池における温度耐性について、説明したいと思います。

電子部品の温度耐性 (例:CPU)

まず、電子部品についてです。

スマホやパソコンには、膨大な数の電子部品が搭載されていますが、スペックに重要なのは、CPUやメモリやHDDなどです。

CPUとは、演算処理などの指令を行う頭脳の役割です。メモリとは、演算処理などを高速で行うにあたり一時的にデータを出し入れする作業デスクのイメージです。HDDとは、データを長期的に記録するための本棚や書籍のイメージです。

このようなCPUやメモリやHDDは、半導体技術を用いて作られています。半導体とは、名前の通り、「半分導体で、半分導体じゃないもの」です。もう少しかみ砕くと、「半分電気を流すけど、半分電気を流さないもの」です。

ここでは半導体部品の1つである「CPU」の温度耐性について考えてみたいと思います。

CPUの温度耐性のイメージは下記となります。

■半導体部品の気持ちをイメージ化(例:CPU)

・CPUの動作温度は、「氷点下付近~80℃程度」です。適正な温度は25℃前後となります。

・動作温度範囲外の「氷点下や、高温80℃付近」では、CPUの処理速度は一時的に大きく低下します。

・CPUは半導体とそれを封止する樹脂パッケージ等で作られており、一般的な樹脂の耐熱性付近となる「80~130℃程度」になると、元通りにならないダメージが蓄積されてしまいます。

・温度が「さらに高温(例えば150℃以上)」になると、短時間で壊れる領域となります。

(このようなCPUの温度耐性は、製造元にて、開発段階や量産品抜き取りで限界試験をします。学会や論文などにも、試験方法や考察結果などが掲載されていますので、気になる方は限界試験で調べていただけたらと思います。)

このように、スマホやパソコンに使われている電子部品(CPU)は、動作温度の上限80℃付近を超えてくると性能が低下、さらに温度があがると、寿命が大きく低下したり、最悪、故障してしまいます。

電池の温度耐性

次に、電池の温度耐性についてです。

スマホやノートパソコンに使われているものは、「リチウムポリマー電池、もしくは、リチウムイオン電池」となります。リチウムポリマー電池とはゲル状の電解質を用いており、リチウムイオン電池とは液体状の電解質を用いています。

電解質以外は、似たような材料を使っているので、温度に対する耐性はそこまで変わりません。このため、「リチウムイオンを用いた電池」という表現で、説明したいと思います。

リチウムイオンを用いた電池の温度耐性のイメージは下記になります。

■リチウムイオンを用いた電池の気持ちをイメージ化

・電池の動作温度は材料にもよりますが「0℃~60℃付近」となります。電子部品と比べて、動作できる温度範囲はかなり狭いです。また、電池にとって快適な温度は25℃付近となります。

参考までに、iPhoneの使用可能な温度は0~35℃が推奨されています。これは電池の高温での不安全なリスクを考えているためと思われます。

・60℃以上は電池の劣化が加速し、電池の寿命が大きく縮みます。さらに、130℃~150℃を超えたあたりから、電池材料によっては発火や爆発するリスクが生じます。

このように、電池は、動作できる温度範囲が0℃~60℃付近と狭く、発火リスクもあるのが特徴です。

なぜそうなのかについては、3つの電池材料が起因しています。その理由について解説いたします。

理由①「電解質」

電池は、正極、負極、セパレータ、電解質、外装(缶やラミネートや箱)でできています。

電解質は「ゲル状のポリマー、もしくは、液体(正確にいうと有機溶媒)」なので、氷点下になると、電解質が凍ってきて(もしくはドロドロになってきて)、電池として機能しにくくなります。

逆に、60℃以上の高温になると、電解質のなかに入っている電極保護添加剤の分解が加速されます。添加剤は、正極や負極と電解質が反応しすぎないように守る役割をしているのですが、この添加剤が減ってしまうと、電池性能の低下や、寿命低下が加速されます。

さらに、80℃付近になると、添加剤だけでなく、電解質の溶媒も沸点に近づいてくるものがあるため、電解質が急激に分解され、ガスが大量に発生します。また、電解質が分解された際に、分解物が正極や負極やセパレータに堆積し、電池の内部抵抗が大幅に増加します。

このように、電解質の分解が60℃付近から加速するため、電池は高温に弱いです。

もしも、スマホがぷくぷく膨らんできたな・・・と思ったら、高温で電解質が分解されたことが原因の可能性が高いです。電解質の分解でガスが発生して電池が膨らんだのか、分解物が堆積して電池の中身が膨らんだことが原因と想定されます。

あと、あまり電池が膨らんだ状態でスマホを使い続けるのはオススメしません。それは不安全だからです。理由は、 次のパート「発熱による電池寿命影響と危険性 」でお伝えします。

理由②「セパレータ」

セパレーターは、正極と負極を分断している絶縁の役割を持つ樹脂材料です。安全機能の役割もあります。

セパレータは、ポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂でつくられた基材と、熱に強い耐熱層を備えた積層構造をしています。また、リチウムイオンを通すために、無数の微小な穴が開いています。非常に薄いスポンジみたいなものをイメージをしていただけたらと思います。

セパレータの基材は、材料にもよりますが、だいたい120~140℃くらいになると、スポンジの穴が溶けてなくなります。このため、リチウムイオンや電気を流せなくなり、電池として機能しなくなります。これをシャットダウンと言い、高温時の電池の安全性機能になります。

また、セパレータは160℃付近になると、溶けて収縮していきます。このため、内部短絡などが起こった場合、局所的に電池内部で温度が400℃以上に瞬間的に上昇するので、セパレーターは溶けてしまい電池を守ることができません。このため、内部短絡が市場での発火要因として一番多いと言われています。

内部短絡は「携帯扇風機の事故」の記事で詳しく触れています。興味のある方はご一読ください。

理由③「正極材料」

正極の材料には、容量の大きいニッケル(Ni)がよく使われています。また、ニッケルだけでは、不安定な構造となるので、コバルトやマンガンやアルミなどの材料を混合し、焼成して作られています。

ニッケルは熱安定性が悪いため、だいたい130℃~160℃くらいになると発火する危険性が高まります。このため、安全機能として、先ほど説明したセパレータのシャットダウン機能があります。正極が発火(熱暴走)する前に、セパレータの穴が閉じて、電池としての安全に保つことになります。

とはいえ、普通に電池を使う分には、130℃~160℃まで温度が上がらないので、電池は燃えることはありません。

しかし、安心はできません。

例えば、電池を製造する際に微小な金属異物が入っていて内部短絡が生じると、電池内部で局所的に大電流が流れ、温度が数百度、急上昇します。これにより、内部短絡箇所の近くにある正極が最終的には熱暴走し、予期せぬ電池の発火が発生することがあります。

このような予期せぬ事態になりうる危険な電池の使い方について下記にコメントしておきます。

お気を付けください。


どんな時に電池が燃えるのか?

・異常な状態で使い続ける(電池がパンパンに膨らんでいる。炎天下のアスファルトの上に放置)

・どこのメーカーか分からないような安物電池(品質が悪いと金属異物が電池に入っていることがあり、内部短絡で最悪発火します)

・スマホを踏んづけたりして電池が変形しているのに使い続ける(電池内部のタブや芯材などの金属で内部短絡し最悪発火します)

・充電がいつまでたっても終わらない状態で使い続ける(過充電やリチウム析出などで不安全リスクが高まります)

・充電しても、30分くらい使うとすぐに電池が空になるのに使い続ける(内部短絡やLi析出している可能性あり不安全です)

発熱による電池寿命影響と危険性

温度が高い状態で電池を使い続けると、電池はみるみる劣化していきます。専門書や論文にも記載されている電池寿命予測である被膜形成モデルで考えると、通常よりも+15℃の環境で電池を使い続けると、寿命は約半分になってしまいます。私が実際に設計開発した電池も、同程度、温度によって電池の劣化が加速しました。

また、電池が劣化したまま使い続けると、最悪、発火するリスクが高まってきます

その理由は2つあります。

1つめは、電池内部の圧力が高まることによる、内部短絡による発火リスクです。電解質の分解物が正極や負極の表面に堆積されていくため、電池の内部では行き場を失った状態になり、正極や負極が折れ曲がったり変形したりします。この際に、正極や負極の芯材が露出したり、電極タブと接触したり、製造過程で混入した微小な金属異物がセパレータをつきやぶったりし、内部短絡が発生することがあります。内部短絡が発生すると、瞬間的に、大電流が電池内部で流れるため、正極が熱暴走し、最悪、発火してしまいます。

2つめは、電解質の分解で、リチウムイオンのキャッチボールがしにくくなることです。これにより、局所的に電流が流れたり、負極表面の抵抗が大きくなりリチウムイオンを受け取れなくなり、金属リチウム析出に繋がります。金属リチウムはデンドライトという針状に成長していくため、正極と負極がデンドライトによりショート(内部短絡)し、発熱します。この発熱が大きいと最悪発火に繋がります。発火に繋がらなかったとしても、発熱により電解質の分解が進み、1つめの理由で発火リスクが高まることになります。

これより、スマホがものすごく熱くなっている状態で使い続けていると、電池の劣化が加速し、リスクも高まります。

対策としては、スマホを冷却グッズなどで冷やし、電池の寿命を延ばすことや、電池が劣化してきたらすぐに交換することが重要となります。

電池の交換目安は、購入時から電池の持ちが7割に低下してきたあたりが良いです。5割以下では、電池によっては、内部で極板が折れ曲がったり、金属リチウムが析出している可能性があるので注意が必要です。 いくつかの企業の電池を解体したことがありますが、5割以下だと、若干、電池内部の状態が悪く、リスクが高くなっていることがありました。


もしも、電池についてもっと詳しく知りたいと思っていただけたら方がおられたら、下記の本をお勧めします。

高校や大学のいわゆる電池の教科書というよりは、より商品設計にちかい目線での電池のことが書かれています。

大手企業の電池技術者と同じ目線のレベルで知識を蓄えることができると思います。私が後輩に進めている書籍のひとつです。私自身、上司から進めて頂いたものでもあります。

(もし、電池業界に新就職する方や、他業界からの転職考えている方は、ぜひ読んでいただきたいです。電池を商品化・量産化フェーズの開発は、リチウムイオンの反応式など、いわゆる学術的な知識はあまり使いません。主に必要なのは、商品信頼性や安全性に関わる電池設計技術と、特性を予想するための推定技術といったバッテリーマネジメントの知識となります。この本の知識を持っているひとは、意外と電池メーカーにも少ないのが実情です。)

さいごに

今回、スマホやノートパソコンやタブレットがものすごく発熱したときに、どんなことが起こっているのかを解説させていただきました。

まとめると、下記のようになります。

「電子部品(CPU)」

・動作温度の氷点下~80℃付近を超えてくると性能が低下
・さらに温度があがると、部品寿命が大きく低下し、最悪、故障する

「電池」

・動作温度は0℃~60℃付近と狭く、発火リスクもあり
・60℃を超えてくると、電解質の添加剤の分解が加速し、電池の性能や寿命が低下
・130℃以上は、電池が発火するリスク有
・電池が劣化すると抵抗増加で発熱しやすくなり、さらに劣化が加速する悪循環になる

冷却対策

スマホの電池が劣化してくると、抵抗増加で発熱しやすくなり、さらに劣化が加速する悪循環となります。

このため、スマホや電池を長く安全に使うためには、電池を冷却することが重要となります。また、スマホに冷却グッズを使った場合、電池交換頻度が減ったり、スマホ自体の寿命も長くなるため、生涯的にはお得となります。

下記の記事にまとめていますので、ご参考いただけたらと思います。



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